ジキルの遺書
いつだって心はギリギリだ
あと一手で崩壊する木箱
倒壊手前のピサの斜塔
思えば生まれてきてから
仮面を被っている時間の方が長くて
そいつを被っている事すら忘れてしまった
頭の中を可視化出来たなら
空白 からっぽ がらんどう
無意識に被り続けていた仮面は
僕の自我を
ありとあらゆるアイデンティティを
食い潰していった
時折心が悲鳴を上げる
そいつは一瞬姿を消し
からっぽな自分が姿を見せる
そうすると
空間と上手く融合出来ず
時間と上手く融合出来ず
剥がれたそれを慌てて被る
自分が自分でない感覚
自分が自分でない感覚
いつだって心はギリギリだ
木箱は僕の一手で崩れ
斜塔はとうの昔に倒れた
僕もまた、僕を殺していた
それに気付かぬまま今日まで来た
明日からも気付かない振りを続けるのだろう
なんだか最近頭が痛くて
空白 からっぽ がらんどう
無意識に被り続けていたそれはもう
僕の意識に
ありとあらゆる全てに
成り代わった後だった
時折心が悲鳴を上げる
そいつは一瞬姿を消し
からっぽな自分が姿を見せる
そうすると
空間と上手く融合出来ず
時間と上手く融合出来ず
剥がれたそれを慌てて被る
時折心が悲鳴を上げる
そいつは一瞬姿を消し
からっぽな自分が姿を見せる
そうだろう
何十回と殺人を繰り返した人間の
何十回と殺された人間の成れ果てが
今目の前にいる、お前だ
自分が自分でない感覚
自分が自分である感覚
自分が自分でない感覚
自分が自分でない感覚
誰だってみんなギリギリだ
木箱は目の前で崩れ
斜塔はとうの昔に倒れたらしい
君もまた、君を殺している
それに気付かぬまま今日まで来た
明日からも気付かない振りを続けるのだろう